日本のみならず世界を住み歩き食べ歩いた経験を発信しています。
今回は私たちの生活に大きな影響を与える関税の撤廃について発信します。

日欧経済連携協定(日欧EPA)が発効されました。
2019年2月1日にとうとう発効されました。
一体どんな影響があるのでしょうか?
何がどのくらい下がるのか?ワインは?牛肉は?
関税ってわかりにくい上に情報が錯綜しているのでまとめてみました。

まずは、政府の発表内容を取りまとめました。
その後に、具体的なワインの状況について解りやすくご案内しましょう。
目次
日・EU経済連携協定
政府発表内容

背景
保護主義的な動きや新興国による市場歪曲的な措置(産業補助金,技術移転の義務付け等) WTOドーハ・ラウンド停滞,現代化の必要性(電子商取引,投資,紛争解決,透明性向上等) ⇒ 日本は,TPP11,日EU・EPA,RCEPを主導し,貿易自由化を推進
協定の意義
本協定はアベノミクスの成長戦略の重要な柱(総理施政方針演説等)。
日本の実質GDPを約1%(約5兆円)押し上げ,雇用は約0.5%(約29万人)増加の見込み。
(内閣官房TPP等政府対策本部による試算)
自由で公正なルールに基づく,21世紀の経済秩序のモデル(国有企業,知的財産,規制協力等)。
世界GDPの約3割,世界貿易の約4割を占める世界最大級の自由な先進経済圏が誕生。
(EUのGDPは17.3兆ドル(世界GDPの21.7%)。日本のGDPは4.9兆ドル(世界GDPの6.1%)。)
⇒ 本協定は,日EU双方の経済界からの期待に応えるものであり,日EUが貿易自由化の旗手として世界に範を示すもの。
(参考)
日本のEPA・FTA
経緯:これまで21か国・地域と18の経済連携協定(EPA)が発効済・署名
済(2018年12月現在)。
<EU概要>
構成国 28か国(ベルギー、ブルガリア、チェコ、デンマーク、ドイツ、エストニア、アイルランド、ギリシャ、スペイン、フランス、クロアチア、イタリア、キプロス、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、ハンガリー、マルタ、オランダ、オーストリア、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スロベニア、スロバキア、フィンランド、スウェーデン、英国)
総人口:5億1181万人(2017年)
(日本の約4倍)
<経緯>
2013年 3月 交渉開始決定
2017年 7月 大枠合意 2017年 12月 交渉妥結
2018年 7月 署名
日本側は,2018年12月8日に本協定を国会承認。 EUの最近のEPA・FTA EU側は,本協定を2018年12月12日に欧州議会本会議で可決,20日に理事会で承認。 ・カナダ:2016年10月署名
・韓国:2010年10月署名
⇒12月21日に,日EU双方は本協定発効のための国内手続を完了した旨を通告。本協定は2019年2月1日に発効。
主な内容:物品貿易
日本産品のEC市場へのアクセス EU側関税撤廃率:約99% (注1)(注 2 )
工業製品
100%の関税撤廃
乗用車(現行税率10%) 8年目に撤廃。
自動車部品 :9割以上が即時撤廃(貿易額)。
一般機械,化学工業製品,電気機器:約9割が即時撤廃 (貿易額)。
一般機械:86.6%,化学工業製品:88.4%,電気機器:91.2%。
農林水産品等
○牛肉,茶,水産物等の輸出重点品目を含め,ほぼ全品目で関税撤廃(ほとんどが即時撤廃)。
○日本ワインの輸入規制の撤廃(醸造方法の容認,業者による自己証明の導入)。酒類の全ての関税を即時撤廃。自由な流通が可能。
○農産品・酒類(日本酒等)に係る地理的表示(GI)の保護を確保。
↓
工業製品:大企業のみならず,メーカーに部品を納入する中小企業にも裨益。
農林水産品:5億人を超えるEU市場への日本産農林水産物輸出促進に向けた環境を整備。
酒類:輸出拡大とGI保護によるブランド価値向上。
EU産品の日本市場へのアクセス 日本側関税撤廃率:約94%(農林水産品:約82%、工業品等:100%) (注1)
(注1)撤廃率は,品目数ベースのもの。 (注2)EU側の撤廃率はEU側公表資料による。
工業製品
○化学工業製品,繊維・繊維製品等:即時撤廃 。
○皮革・履物(現行最高税率30%):11年目又は16年目に撤廃。
農林水産品等

○コメは,関税撤廃・削減等の対象から除外。
○麦・乳製品の国家貿易制度、砂糖の糖価調整制度,豚肉の差額関税制度は維持。関税割当てやセーフガードを確保。
○ソフト系チーズは関税割当てとし,枠内数量は国産の生産拡大と両立可能な範囲 に留めた。
○牛肉は15年の関税削減期間とセーフガードを確保。
主な内容:サービス貿易・投資,ルール分野

サービス貿易・投資・電子商取引 (ネガティブ・リスト方式)。
○原則全てのサービス貿易・投資分野を自由化。留保する例外措置・分野を列挙
○欧州で活動する日系企業のニーズに対応
○電子商取引の安全性・信頼性確保のためのルールを整備(電子的な送信に対する関税賦課禁止,ソースコード開示要求の禁止)。
21世紀型のハイレベルなルール
国有企業・補助金
○国有企業:物品・サービス売買の際の商業的考慮,相手方民間企業に対する無差別待遇の付与を確保。
○補助金:通報義務,協議要請手続,一定の類型の補助金の禁止等を規定。
知的財産
○WTO・TRIPS協定より高度な規律を規定(営業秘密の保護,著作権の保護期間を著作者の死後70年に延長等)。
○地理的表示(GI)の高いレベルでの相互保護。日本側GIは56件(「神戸ビーフ」,「夕張メロン」,「薩摩」,「日本酒」等)。

規制協力
○日EU双方の規制当局が,貿易・投資に関する規制措置について,事前公表、意見提出の機会の提供,事前・事後の評価,グッドプラクティスに関する情報交換等を行う。
以上が政府の発表内容です。
む・難しい・・・ですよね。
それでは具体的にみていきましょう。
ワインに焦点を絞ります。

関税撤廃でフランスやイタリアなど欧州ワインが安くなりました。
2019年2月1日の日欧EPA(経済連携協定)発効により、 フランスやイタリア、ドイツなどのワインが安くなってます。ヨーロッパワインの関税が撤廃されたからです。一体どれぐらい安くなったのでしょうか?
どのくらい安くなったのか
今までは、フランスやイタリアなどの欧州ワインの価格には輸入の際の関税分が上乗せされていました(ワインに限らずあらゆる輸入品)。
これによって、現地より少々割高な値段となっていました。
今回の日欧EPA(経済連携協定)は、主にこの関税を見直したもので、TPPの日本-EU版と言えば解りやすいかな。
欧州ワインの関税がEPA発効(開始)と同時に即時撤廃されました。
今までのの関税はいくらだった?
そこで気になるのが今までどれくらい関税が課せられていたのか?です。
今までは、フランスやイタリアなど欧州ワインには、1本(750ml)あたり約93円もしくは価格の15%の関税が課せられていました。
この約93円か15%のどちらか安い方が適用されていました。
具体的に言うと、600円以下のワインの場合15%の関税で、600円以上のワインには1本約93円の関税が課されていたのです。
93円以上安くはならない?
そうなんです、関税が撤廃となってもあまり大きな値下げにはなってません。
今まで課されていた関税が、約93円もしく15%のどちらか安い方ですから、93円以上の値下げにはなってないのです。
100万円のワインでも600円のワインでも値下げ分は同じく93円です。
高級であればあるほど今回のEPAの恩恵は小さいですが、1,000円以下のワインは、93円は大きく感じます。
比較的安くて美味しいワインが多いイタリアやスペインのワインは、チリワインのように人気が上昇するかもしれませんね。
もちろんフランスやドイツにも安くて美味しいワインはありますから、関税の撤廃は大歓迎です。

カリフォルニアワインも安くなる可能性があった
実はカリフォルニアワインも同様の理由で安くなる可能性がありました。
みなさんご存知のTPPによる関税の撤廃です。
カリフォルニアワインといえば、ナパやソノマ等のブランド力を誇るワインを多く抱えるワインの銘醸地です。質が高く、欧州の高級ワインにも引けを取らない秀逸ワインの宝庫です。
筆者はもちろん、多くの方が期待していたのですが、こちらもみなさんよくご存じのとおり、トランプ大統領の就任とともに事実上無効となってしまいました。
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